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Logos -LivexEvil Ante Christum- act.01

エビル外伝初回です。
お手数ですが、下記リンクを開かれる前に、
注意事項をご確認ください。

・本作はオフィシャル外伝ではありません。
私宙地の個人創作物としてお楽しみ頂ければ幸いです。

・ゲーム本篇より四十年ほど前の世界が舞台です。

・基本的にゲーム本篇のネタばれを考慮していません。
ネタばれを回避したい方は、閲覧を控えてください。

・BLっ気はほのかなアロマの香り程度です。

・亀更新です。気長にお付き合いいただけると嬉しいです。

・作品への苦情、感想などは宙地までお寄せください。
EDGEの元運営会社様へ問い合わせを行うことは絶対にご遠慮ください。


登場人物設定はこちら

以上、すべて了解したよ!という方は、下記リンクよりどうぞ。

1.


 「国家」の意味も知らない子供の頃から、大きくなったら自分は軍人になるのだと、何の疑問も抱かずに、ずっとそう思っていた。
 祖父は軍人だった。父もまた、軍人だ。
 五つ年上の兄は、士官学校を首席で出たのち、軍の情報指令本部で順調にキャリアを積んでいる。二十五歳の若さで上校の称号を得た者は、ここ十年で兄一人らしい。
 親に決められて父と結婚した母は、二人の息子が夫と同じ「軍人」になることを、快くは思っていなかった。シェーナの女性には珍しく、リベラルなものの考え方をする人だったから、保守的な祖父や父のことが、最後まで理解できなかったのだろう。俺が士官学校に入学した十六のとき、母は家を出て行った。以来、一度も会っていない。

 入学試験の成績は、全生徒の中で二番目だった。兄と同じく一番でなかったことに、祖父や父は驚き、怒った。だけど俺は、自分が二番だったことよりも、一番をとったやつのことが気になった。俺の成績は、どの科目もほぼ満点に近いものだった。つまりそいつは、全問正解に限りなく近い形で合格を果たしたということだ。純粋に、どんなやつなのか興味があった。

 ――いまでも鮮やかに覚えている。
 あれは、士官学校に入学して、まだ日も浅い頃のことだ。
「我らがシェーナ共和国は、大陸東方の強国として、周辺諸国を従え、統率してゆく義務がある」
 風の強い、良く晴れた日の午後だった。四限目の、軍事史の講義中。大陸の地図を示しながら、淡々と語る教官の言葉に、手を挙げた奴がいた。
 「……質問かね?」
 講義を中断させられて、教官が怪訝な声を出す。室内にいる生徒たちの目が、一斉に一点へと向けられた。
 (……?)
 講義室の右端前方に座っていた俺は、彼らの視線を追って、自分とは対極線上にある、後方の席を振り返った。
 一人の少年が――そう、まだあのころ、俺たちは「少年」と呼ばれる年齢だった――右手を挙げている。士官学校の生徒にしては少し長めの前髪から、切れ長の黒い目が覗いていた。
 (……あんなやつ、いたっけ)
 見覚えのない顔に、そう思う。それよりも、講義中に手を挙げるなど、どういうつもりなのだろう。怪訝に思いながら、俺はそいつが口を開くのを待った。
 クラス中の視線が見守る中、少年は、鷹揚な仕草で手をおろす。
 それから、言った。
 「なぜ、そのような義務があるのです?」
 「……なに?」
 問いの意味を即座には理解できないというように、教官が眉を寄せる。生徒たちの間にざわめきが広がった。「なぜ、とはどういう意味だ」
 「ですから――なぜ、諸国を従え、統率する必要があるのです。それではまるで、近隣の国々は、シェーナの属国のようではありませんか?」
 (……なんだ? あいつ……)
 少年の言葉を聞いて、俺は思った。教官の言ったことに、おかしな点があるとは思えない。シェーナが大陸随一の強国であり、他国を統率すべき立場にあることは、揺るぎようのない事実だ。
 「……君は何を言っているのだね?」
 案の定、教官が問い返す。少年を見るその目には、微かな侮蔑の色があった。「シェーナは極東全域に影響力を持つ大国だ。周辺の諸国を圧倒し、支配するだけの力を我が国は持っている。我々は、絶対的な強者なのだ」
 「――」
 少年は、教官を真っ直ぐに見つめたまま言い返さない。
 「いいかね。まともな軍人になりたければ、くだらんことは考えるな。なぜ、などという言葉は、軍に属するものには必要ない」
 切り捨てるような語調で続けると、教官は目を細めた。「……ようやく講義に顔を出したかと思えば、実にくだらん質問だ。君がどれほど優秀なのかは知らないが、この国で出世をしたければ、まずはその態度を改めるのだな、ナギシバ君」
 ――ナギシバ。
 その名前には、聞き覚えがあった。今年の新入生総代。俺よりも――そしておそらく、俺の兄よりも優秀な成績で、この学校に入学した生徒。
 「講義を再開する」
 教官のその声で、少年へと向けられていた好奇の視線が、ひとつ、ふたつと正面に向き直ってゆく。だけど俺は、離れた席に座るそいつから、なぜだか目が離せなかった。
 こちらの視線に気づいたのだろう。前髪から覗く目が、ふいに俺をとらえる。
 「……」
 少年はしばしの間、俺をじっと見つめたあと、興味を失ったかのように視線を逸らした。その仕草はひどく素っ気のないものだったが、不思議と俺には嫌な感じがしなかった。

 変なやつ。
 ――俺は、あいつに負けたのか。

 それが、ロウ・ナギシバに対して、俺が最初に覚えた印象だった。

(つづく)

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